炎上をマーケティングと呼ばないでほしい

インターネット上での炎上という事象は、ずっと以前からありました。掲示板でのやりとり、ブログ記事へのコメント投稿など、その舞台は少しずつ広がってきたと思います。

そしてこの1週間ほど、Twitterで起こった2人のやりとり(ただし私には一方的な攻撃に見えました)が波紋を呼んでいます。ソーシャルメディアが今後大きな役割を果たしていく上で、この事象は最後までちゃんと決着をつけなければならないと考えています。数ヶ月経って風化するのではなく、ソーシャルメディアに関わる誰もが、その使い方、接し方について一定の理解が得られるようになるべきです。

さて、これに関連して、当事者であるネットメディア編集長(今時点で解任されているので元編集長ですが、このエントリでは編集長と記述します)と、そのメディアを運営している会社の代表が、したり顔で「俺たちは炎上マーケティングの第一人者である」ということを公言しています。

彼らのいう「炎上マーケティング」とは、ネット上でいろんなトラブルを故意に発生させ、多くの人に注目してもらうことで、自社や関連サービスの(ポジティブとは限らないが)露出を獲得するものです。今回は、編集長が女性の投稿に対して難癖をつけ、その後再三にわたって罵詈雑言を浴びせ、勝手に終了して去っていく、というものでした。この手法は、炎上の対象にさせられた人、コト、モノが受ける非条理な(精神的、金銭的などさまざまな)損害が発生することが前提になっています。

こうした社会システムに反する手法をあたかも「マーケティング」のひとつのように扱われることは、我慢なりません。露出アップ、認知度アップということだと、広告やPRと同じ効果を目指しているのだけれど、(主に)個人を攻撃することで実現できる手段・手法はおよそ認められるものではありません。

重ねて、件のメディア運営会社トップは、「炎上」に対応するプロであり、そのためのコンサルティングを始めたと発表しています。自分たちから火のないところに発火させ、それを消しに行く役目を果たすという、まさにマッチポンプ。

(このコンサルティングサービスの発表内容も、多数の衛星ブログでエントリを作成し、検索エンジンにて上位表示を画策しているようです。多くの人はこれをSEOマーケティングと呼んでいるようですが、これもマーケティングと呼ぶのも勘弁してほしいです。)

いまは多くの人がマーケティングという言葉を簡単に使うようになりました。しかし、マーケティングという考え方が広がってきた初期の頃、「マーケティングとは、消費者をダマして自社商品を買わせようとすることだ」といった見方もあったと聞きました。違います。マーケティングとは、その商品やサービスを手に取り、使うことで、その人の生活に一定のいい効果が得られるよう、商品に関する情報を必要な人に伝達する技術、およびそのための情報収集技術のことだと思います。この炎上手法は、まさに人をダマし、ターゲットとなった人に甚大な被害を与えるものです。それをマーケティングだとは呼ばないでほしいです。