クチコミマーケティングは「語っていただく」こと

Web担当者Forumにある、

「豚組なう」で怒られる? クチコミを舞台裏からみるマーケティング

という、その主旨がわかりづらい記事に遭遇しました。この記事を執筆した宮脇氏は、六本木のしゃぶしゃぶのお店「豚組」がツイッターを活用したマーケティングを取り上げ、その手法が米国では禁断の手段であるようにも読める説明を加えています。

もっとも残念なのは、

マーケティングにおける「クチコミ」とは「仕掛け」によって「語らせる」ことであって、客が勝手にしゃべりだすのを祈ることはしません。

が、ソーシャルマーケティングの真髄だ、と説いているところです。おそらく、店のオーナー中村氏の著書「小さなお店のツイッター繁盛記」134ページにある記述と、その2ページ前にある広告業界の「スリーヒットセオリー」などとあわせて、「仕掛け」と「語らせる」という表現になったのかもしれません。

ツイッターで会話してお店にきてくれたお客様に挨拶にいき、おまけの一品を届ける。よかったらお友達に紹介してね、という会話をする。お客様がこの一連のコミュニケーションとサービスに喜ぶ。それを「商品で釣って言わせている」というのは、マーケティング手法のひとつとしての説明には短絡過ぎるでしょう。

私にとってこの著書の根幹は、情報過多とスピードアップのために顧客との関係作りさえも希薄になりつつある飲食店にとって、ツイッターで絆を強め、コミュニケーションを繰り返すことで、おのずと店のクチコミ情報が蓄積されていくことにあると思います。

私はクチコミマーケティングとは

  • 商品の消費・サービスの利用によって得た知識、体験情報を
  • それを必要としている人にデジタル・アナログネットワークを通じて届ける技術

と捉えています。中村氏が著書の中で記述しているさまざまな工夫は、この技術をうまくドライブをかけるものなんだと思います。

したがって、目指すのは消費者に語らせるのではなく、「語ってもらう環境を提供する」ことです。絆を強めた顧客に、店にだけ都合のよいことを語らせるという無礼なことなんてできないと思うのです。

また、今回の記事の最後に、宮脇氏は著者・中村氏や豚組とのリレーションがないことをわざわざ記述しています。本文中で金銭・商品を主体者からもらってレコメンデーションを行なうことが米国では規制されていることを紹介し、日本でも新聞などの既存メディアにおける「広告であることの明記」に言及していることから、中村氏の著書を記事内で取り上げたが、豚組との利害関係はないことを強調したかったのだろうか、と邪推してしまいます。または、豚組の成功と、それを支えた顧客との絆に対する嫉妬のようにも受け取れます。どちらにしても、かなりお粗末な締めくくりだと思います。

本文で伝えたいこととは無関係な内容ですし、それを読むことでクスッと笑えるオチや、ニヤリとさせるユーモアもありません。もし、本意でないなら、削除して訂正文を掲載するなり、追記するなりをしたほうがよいでしょうね。

ちなみに、私の場合、4年くらい前にとんかつにハマったときに知人から豚組の名前を聞いて食べにいったのが最初で、その後偶然しゃぶしゃぶのしゃぶ庵の前を通りかかって、ふらりと入ったのが2年ほど前でした。その後、ツイッターがきっかけになった昨年の試食会で中村氏にお会いし、その後もイベントや友人たちとの新年会などでお邪魔しています。毎回、おなかと心が満たされています。ちょっとぐらい遠くても、ああまた食べたいな、あの人と一緒に行きたいな、と感じる大切なお店のひとつです。そして、この私の豚組に対する感情が、上記にて書き連ねた著書に対する私の感想と、クチコミマーケティングの考え方をゆがめてしまうとは思っていませんし、読み手にそういう誤解を生むこともないはずです。

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コメント

  1. Toshi Oshio より:

    Newly blogged: : クチコミマーケティングは「語っていただく」こと http://bit.ly/9DoIjm

  2. RT @toshi_oshio: Newly blogged: : クチコミマーケティングは「語っていただく」こと http://bit.ly/9DoIjm

  3. Toshi Oshio より:

    「豚組なう」が変な形で紹介されている記事があり、しかもクチコミマーケティングのあり方をただのネット広告のひとつのように扱われていたので、『クチコミマーケティングは「語っていただく」こと』を書きました。→ http://bit.ly/9DoIjm